

ユーザー:京都大学化学研究所 複合基盤化学研究系 分子集合解析研究領域 若宮淳志教授
京都大学化学研究所 複合基盤化学研究系 分子集合解析研究領域(若宮研究室)の若宮淳志教授に、ご愛用いただいているソルトラミニの導入目的や選定理由について、また、実際の運用方法について研究員の岩﨑保子さんにお話を伺いました。
ソルトラミニ GBCS-mini-Ⅰ について

これ1台で加熱、冷却凝縮、ガス循環が可能で、ロータリーエバポレーターを代替し、小スケールの溶媒濃縮・再生を効率よく行います。
閉鎖循環系を採用した、超小型の有機溶媒濃縮回収システム(溶剤再生装置)です。蒸発部(20ml, 50mlの2つのタイプがあります)に溶媒を入れ、あとは条件設定(加熱温度、冷却温度、エア吹付流量)してスイッチを入れるだけ。溶媒ガスを外部に漏らすことなく、簡単・安全・迅速に、有機溶剤の濃縮回収・精製・再生が可能です。
温度・エア吹付量の微調整ができますので、蒸発(濃縮)速度を様々に制御することも可能です。
以下のような用途にどうぞ!
・重水素化溶媒やフッ素化溶媒の回収・再利用に
・単結晶の生成に(非常にゆっくりとした濃縮条件)
・少スケール実験の濃縮に
・カラム精製後の分取フラクションの濃縮に
本製品は、弊社が特許取得している「閉鎖循環式溶剤回収システム、クローズド溶剤回収システム」のうち最もコンパクトなシステムです。弊社(日本国内)で丁寧に組立てておりますので、信頼性・耐久性に優れており、修理も可能です。長期間安心してお使いいただけます。

Q1.ご研究において、装置導入前に課題と感じていた点を教えてください。
A1.(若宮教授)
当研究室では、主にペロブスカイト太陽電池の開発研究とそのデバイス試作を行っています。この研究においては、大量のデバイスを試作・評価する過程で、ペロブスカイト半導体に含まれる鉛(Pb)の回収および廃棄の課題がありました。PbI₂などの原料はDMFのような極性有機溶媒によく溶解するため、デバイス製作時の塗布工程のみならず、使用後のデバイスや器具をDMFで洗浄し、Pbを含む材料を溶解・回収しています。こうした背景から、Pbを含むDMF廃液の処理と、廃棄物の体積削減が課題となっていました。
Q2.ソルトラミニを知ったきっかけと、第一印象をお聞かせください。
A2.(若宮教授)
営業担当の方から紹介を受けて装置の存在を知りました。第一印象としては、非常にコンパクトである点、冷却水や真空ポンプなどのユーティリティが不要である点、そして簡単な操作で濃縮ができるという点に魅力を感じました。
Q3.装置導入の決め手となった点は何でしょうか。
A3.(若宮教授)
一般的な減圧蒸留と異なり、沸点以下の加熱よる安全性や、常圧で濃縮するため突沸の心配がない点は大きな利点でした。DMFは高沸点である一方で、常温でも蒸気圧が高いため、ソルトラミニの吹付濃縮でも十分な速度で処理が可能と判断しました。こうした点が、簡便かつ迅速に濃縮処理を行えるという導入の決め手となりました。
実際のご使用状況について、岩﨑さんにお話を伺いました。
Q4.装置はどのような場面で使用されていますか?
A4.(岩崎さん)
試作したデバイスに付着したPbI₂を含む材料や使用済みの容器をDMFで洗浄した後、その廃液をソルトラミニで濃縮・回収しています。回収したDMFは再利用し、洗浄後の容器やデバイスは通常の廃棄物として処理しています。また、濃縮(乾固)された物質については鉛を含む廃棄物として適切に処理しています。
Q5.装置をご使用になった感想はいかがでしょうか。
A5.(岩崎さん)
使用当初はドラフト外で運用していましたが、濃縮中に溶媒臭が拡散することもなく、簡便で安全に処理が可能でした。現在はドラフト内で使用していますが、装置が非常にコンパクトで、100V電源のみで稼働する点も助かっています。薄い溶液であれば、50mLバイアル瓶1本を半日程度で濃縮できており、各部屋に1台ずつ導入することで、濃縮作業が滞ることなく効率的に運用できています。DMFの再利用による廃液の削減、鉛を含む廃棄物の量も大幅に削減でき、持続可能な研究活動に貢献できていると感じています。
Q6.使用中に課題やトラブルがあればお聞かせください。また、その解決方法についても教えてください。
A6.(岩崎さん)
装置導入当初は、既に溜まっていた廃液の処理が課題でした。最初は50mLのバイアル瓶を一つずつ最後まで濃縮してから次に進める方式でしたが、なかなか処理が進まなかったため、昼間は薄い溶液を随時交換しながら処理量を増やし、やや濃くなった溶液については夜間に濃縮を行う運用に切り替えました。これにより処理効率が改善され、現在では廃液の停滞なくスムーズな運用ができています。
※補足:濃縮容器内の溶媒量が減少すると加熱効率が低下するため、溶媒の種類によっては濃縮に時間を要する場合があります。
Q7.ソルトラミニに対して、今後追加してほしい機能があれば教えてください。
A7.(岩崎さん)
一度、薄い溶媒のバイアルをそのまま夜間運転にかけてしまい、翌朝には完全に乾いてしまっていたことがありました。空焚きを防止する機能があれば、より安心して使用できると感じています。
※補足:運転タイマー機能をご活用いただくことで、長時間の空焚き防止が可能です。
Q8.テクノシグマ製品に関するご意見があればお聞かせください。
A8.(岩崎さん)
ペロブスカイト太陽電池の研究開発においては、膜質や効率向上など、成果物に注目が集まりがちですが、同時に試作過程で生じる廃棄物の管理も極めて重要です。特に鉛のような有害物質については、適切な処理が求められます。ソルトラミニはその点において大変有用であり、今後も研究の裏方を支えるような、スポットライトの当たらない部分に寄与する製品の開発を期待しています。
最後に
このたびは、お忙しい中インタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました。デバイスの開発に伴う廃棄物処理という課題に対し、低エミッションで持続可能な対応を実践されている姿勢が印象的でした。また、アセトンやクロロホルムの精製におけるソルピュアの活用も含め、溶媒廃棄量の削減という観点からも、持続可能な研究活動に弊社の装置が貢献できている好事例といえます。
